「作 品」
人は生まれた時、真っ白いキャンバスを一つ、仏さまから頂きます。
掴まり立ちを覚えて行くように、最初は点を打つだけ。やがて縦の棒、横の棒、次は丸や三角・四角が描けるようになっていきます。 そして嬉しい時は明るい色を、悲しい時やつらい時は沈んだ色を絵筆に載せていきます。
人生の節目の様々な出来事がひとつづつ、鮮やかな色彩と共に生き生きと描かれて、画面が少しずつ埋まって行きます。
初めておつかいに一人で行ったこと。やさしかったおじいちゃん、おばあちゃんと一緒にお祭りに行ったこと。家族で愛していたペットが静かに息を引き取った時のこと。
かけがえのない恩師との出会い、そして大切な人との別れ…。
「作品」の完成は、ある日突然訪れます。描いた本人は、それを自分の眼で見ることはできないのです。
何年か後に、残された私たちが心を込めて描かれた「作品」に対面し、作者の語りかけに静かに耳を傾けること、それがご法事の大切な意味なのかもしれません。(良光)
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